2011年12月5日月曜日

開催報告 第6回ざっくばらん家庭医療勉強会 in 熊本


プロジェクトスタッフの菅家です。
熊本大学で行われた「第6回ざっくばらん家庭医療勉強会in熊本」の報告を頂きましたので、紹介します!

報告は熊本大学医学部の学生、金村さんからいただいています。
報告ありがとうございました!!
今後も熊本での動き、どんどん広がっていくといいですね!

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みなさんはじめまして。
熊本大学医学部5年の金村宙昌です。

11月19日に行われた「第6回ざっくばらん家庭医療勉強会in熊本」のご報告をさせていただきます。

「ざっくばらん家庭医療勉強会」は、九州プライマリ・ケアネットワーク主催で、今回が6回目!初!熊本開催となりました。会場は熊本大学医学部付属病院で行われました。


日程:
10:45-11:15 受付
11:15-11:30 開会挨拶   
11:30-12:30 【セッション1】「臨床推論」
  講師:松井邦彦先生(山口大学医学部附属病院 総合診療部)
     谷口純一先生(熊本大学医学部附属病院 総合診療部)            
12:30-13:30 昼食
13:30-14:30 【セッション2】「睡眠とプライマリ・ケア」
  講師:粂和彦先生(熊本大学発生学研究所・くわみず病院)  
14:45-15:45 【セッション3】「やってみよう!禁煙サポート」
  講師:高野義久先生(たかの呼吸器科内科クリニック)
16:00-17:00 【セッション4】「家庭医療」
  講師:北村大先生(三重大学医学部附属病院 総合診療科)
17:00-17:30  各施設からの連絡、閉会 
17:30-     懇親会会場に移動

参加人数は,講師,当日飛び入り,途中退室等も含め…全部で50名!?学生の所属も,自治医,産業医,佐賀,長崎,大分,熊本,,,本当に沢山の方が参加して下さいました。

【セッション1】「臨床推論」
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まず、熊本大学総合診療部の谷口先生が、急性腹症の30歳男性を例に、とてもわかりやすく虫垂炎の症状・診察の診断精度について,MANTRELS記憶法をもとにレクチャー下さいました。下級生にとっては臨床推論の良い導入となったのではないでしょうか。クリニカル・パールとして『Rule of zebra; 蹄の音が聞こえたら、シマウマ(珍しい疾患)を思い浮かべず、馬(典型的な疾患)を思い浮かべなさい』『〝よく起こる病気に珍しい症状が起こること〟の方が、〝珍しい病気に典型的な症状が起こる〟よりも多い。』また、今後の勉強に向けて多くの参考文献を提示していただきました!
続いて山口大学総合診療部の松井先生が、左上肢腫脹でこられた中年女性(最終的に乳がん)の症例を元に、多数あるプロブレムのどこに注目するのか、また、各科とどのように連携するのか、お話下さいました。また、認知エラーはどのようにして起こるのか、それを防ぐためにはどのような教育が必要か、説明していただきました。最も多い認知エラーは、早期閉鎖といわれるもので、最初の印象(アンカーリング)や紹介の場合であれば前医の診断に影響を受けて、他の疾患を示唆する所見があるのに診断をやめてしまうために起こるそうです。このような認知エラーを防ぐためには、医師の視点や関心の推移がどのように移っていったか診断までの行き来を振り返ったり、ディスカッションすることが大事だとおしゃっていました。
診断が難しく複数の科を受診された患者さんを相手とした時に認知のエラーが起こる可能性はグッと高まります。そこでいかに他科と連携して、手掛かりが掴めない期間を短くしていくか、難しい問題だと感じました。

【セッション2】「睡眠とプライマリ・ケア」
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熊本大学発生学研究所の粂先生による睡眠障害のレクチャーです。恥ずかしながら、自分の大学にこんな面白い先生がいるなんて初めて知りました。巧みな話術、目からウロコの講義であっという間に時間が過ぎました!まず、不眠症の主な治療法である認知行動療法(CBT)についてのお話がありました。CBTとは、自分の体の状態を間違えて捉えてしまっている認知の歪みを、行動面の変容から強制していくというもので〝心と体の関係を自覚すること〟の大切さを説明されました。例えば、薬を飲まない(偽薬)のに病気が治ることをプラセボ効果と言いますが、科学的に裏付けされている例をいくつか上げられて、〝この偽薬で病気が治る〟と強く『認知』すれば、体に『効果』があることを説明されました。心と体の関係の不思議、奥深さを感じました。次に睡眠に関してですが、2005年より不眠症の定義が変更され、〝夜、眠れなければ、何でも不眠症〟→〝夜眠れない+日中に障害がある〟となったので、医師は、〝眠れましたか?〟ではなく、〝日中うまく活動できていますか?〟に焦点を当てて治療の開始や効果判定をすることが重要であるとおっしゃっていました。治療もこれまでの〝夜、眠れるようにする〟ものから〝昼、調子を良くする〟ものに変化しているそうです。不眠症の問診・診察においてはラポールが最重要で、また睡眠時無呼吸症候群とナルコレプシー、治療法は決まっているむずむず脚症候群とレム睡眠行動障害のような対策が確立している疾患を見逃してはいけないと強調されていました。
睡眠薬を上手に使うポイントは、①睡眠薬はほとんどベンゾジアゼピン系であり、どれもGABA受容体が対象になので、多く処方したところで定量以上には効かず、むしろ副作用が増えるだけだということ②睡眠薬は30分から最大1時間睡眠を延ばす効果しかないので、飲むタイミングを大事にする、少し眠くなりかけてから飲む!ことを知っておいてほしいとのことでした。
先生のHPに睡眠について詳しくまとめてあるので、興味のある方はご覧ください。

【セッション3】「やってみよう!禁煙サポート」
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たかの内科呼吸器科クリニック、高野先生の禁煙レクチャーです。禁煙において最も重要なことは「禁煙は楽だ」ということをしっかり伝えることだとおっしゃっていました。1パックイヤーのたばこ滲出液”タールジャー”を回しながら、喫煙は平均寿命も寝たきり期間も延長することを断言されました。”喫煙”ではなく”ニコチン依存症”として患者に向き合うことが必要で、特に無関心期の患者には”受容はすれど同意はしない”、”減煙を認めない”ことと、実行期や維持期の患者には、医者が毎回禁煙を褒めることを忘れないことが大切ということを教わりました。
行動変容に関しての講義をしっかり受けたのは初めてだったのですが、ステージに応じて、こんなにも対処方法が違うことに驚きました!1本のたばこを溶かした水のにおいを嗅いだのですが、あの臭さは忘れません。。明日から同級生に禁煙を勧めてみようと思いました。


【セッション4】「家庭医療」
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最後は三重大学総合診療科 北村先生の家庭医のレクチャーです。カナダの家庭医療学の4つの原理をもとに家庭医の特徴について学び、家庭医を構成する要素をわかりやすく解説していただきました。いかに患者さんから聞いた話を基に想像力を働かせるかが大切というお話が印象的でした。例えば、”酪農家は食事時に忙しいため、家族で会話したりが逆に難しい”ということなどです。初の熊本開催ということで、家庭医療になじみのない学生が多く、〝家庭医療って何なのかな〟という疑問に答えてくれるお話でした。
学生実習を受け入れる場としてPCFMネットワークというのがあるというのも知りました。http://www.shonan.ne.jp/~uchiyama/PCFM.html熊本での「ざっくばらん家庭医療勉強会」の開催は,今回が初であり,これで熊大での勉強会が終了した,というよりは,これで熊大での勉強会が始まった!といった方が正しいのでしょうか.今後とも継続的に熊大でも家庭医療関連の勉強会ができたら,と思っています.

個人的には、家庭医療を知らなかった同級生がメーリスに参加したいと言ってくれたのが嬉しかったです。今後もこの輪を広げていきましょう!
夜の飲み会も非常に盛り上がりました。熊本なのに2次会で食べたのは久留米ラーメンでした汗 次回開催地は、ゆっくり準備をしてまた告知していく予定だそうです。
本当に楽しくて、勉強になりました!香田君を中心に準備に関わった皆様ありがとうございました。これからもどんどん!九州から情報を発信していきましょう!!


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以上を持ちましてご報告とさせていただきます.

行脚プロジェクトの先生方には大変お世話になりました.
今後とも勉強会開催の際には,どうぞ宜しくお願い申し上げます.

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